ヤズも出世していく魚

ヤズは、20センチ未満の若いブリを指す名称の一つです。出世魚のブリは数ある魚の中でも、成長する段階ごとに特に多くの別名を持っていますが、その名称自体、地域によってかなり違いがあるのも、多くの人を混乱させる要因となっています。そもそもヤズが出世前のブリの名前の一つということ自体、関東地方ではほとんど知られていないことから、その名称を聞き知っていても、何となく、ブリとは別の魚と思っている人も少なくないと考えられます。食材としてその段階のブリが流通する時も、30センチから40センチ未満のブリを指すワカシやイナダ、あるいは大まかにハマチで統一されている感があります。ヤズが通称となっているのは、主に西日本、しかも山陰沿岸や九州の限られた地域とされています。どの段階のどの名称も、大きさによる区分の単位すらも地方によって微妙に違っていますが、概ね、子ども、若者、大人のブリといった段階で呼び分けられているようです。同じ地域でも、漁業者や釣り人の間で呼び方に違いがあるとも言われます。仕入必須の出世魚「ぶり」。出世の過程においしさの秘密が…にも詳しく載っていますね。

ヤズの段階のブリは、まだ脂がのる前ということで、ブリ特有の濃厚な味わいと食感を好む人にとっては、やや物足りない状態と言われます。逆に言えばサッパリとした味が楽しめるということで、ブリらしさが苦手な人にも向く魚料理の食材として最適ということになります。DHA・EPA、アルファ・リノレン酸を豊富に含むオメガ3系脂肪酸が効率よく摂取できる青魚の栄養がさらに注目されるようになっている昨今、脂のりはまだ少ないとはいえ、濃厚なブリが苦手な人には、若い段階のヤズは、健康に良い貴重な食材と言えます。ブリは、刺身からして脂たっぷり感が漂う濃厚な味わいですが、加熱調理の定番ブリ大根や照り焼きなども、どちらかと言えば素材本来の味わいが強烈に主張してくるメニューです。ヤズの段階は脂がのり切っていないぶん、まだその濃厚さには達しておらず、洋風メニューにも向く雰囲気を備えています。
切り身の場合、さまざまな料理に使いやすい形態であることから、業務用の冷凍品をまとめ買いしてストックしておけるというメリットもあります。素材の主張がブリほど強くないだけに、ムニエルやアクアパッツァといった料理にも向いており、脂のりが少ないぶん、バターやオリーブオイルとの相性が抜群となります。業務用の切り身を通販で仕入れるには、鮮魚の状態を直に見て確認できないだけに、信頼して購入できる卸ショップかどうかを、まずはしっかり確認しておくことが大切です。